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Let's Try Dream
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Case☆跡部景吾
カタ……
http://〇ab……
カタカタ……
http://〇abc△def◇……
カタカタカタ……
http://〇abc△def◇ghi.com/
氷帝学園中等部男子テニス部部室レギュラー専用PC前。
長い両脚を窮屈そうに組み、PCと対峙しているのは男子テニス部部長の俺様何様跡部様。
軽快にキーボードを弾くと、見覚えの無い画面が姿を現した。
自分には凡そ似つかわしくないリボンとピンクで構成された画面を一睨みすると、跡部は手に持ったメモ用紙のアドレスと見比べて眉根を寄せた。
どうやらアドレスは間違っていないらしい。
現れたのはとあるHomepage。
男テニ夢小説サイト
『Let's Try Dream☆Ver.氷帝』
―enter―
「アーン?」
【夢小説】という今まで見たことも、聞いたこともない言葉に頭を捻りながらも、跡部はenterをクリックした。
『跡部の奴にはとことん似合わんサイトやなぁ〜』
※忍足が超小型カメラ数台で、別室から様子を見ています(笑)
最初に目がいったのはFirst(初めての方は此処)という文字。
何だかんだで律儀なA型。
跡部は些かの迷いも無くFirst(初めての方は此処)を開き、サイトについての説明と注意書の項目を確認、そして気になっていた夢小説についての説明まできっちり読み込んだ。
「にしても……生ものってのは一体なんだ?」
注意事項にも書かれていた理解不能な言葉。
生ものを扱っている為、小説を読むのにそれぞれパスワードが必要らしいが、そんなことは一切メモには書いてなかった。
『そないにメモ見たかてアドレスしか書いてへんよ』
裏に表にと数度目を走らせる跡部を見て、忍足は笑みを含んだ様子でそれを見ていたが、取りあえず進むことにしたのだろう跡部がDreamのページを開いた。
中には氷帝レギュラーの名前があり、そこから自身の名前を選んだようだ。
パスワード
跡部景吾さんの誕生日
【】
(んなもん決まってんじゃねぇか)
【1004】
パスワードなんて書いてあったため、どれ程難問なのかと戸惑った自分を呪いたくなる。
ページの一番上に名前変換はコチラという案内を見つけて入力画面を開いた。
ヒロインの苗字【】
ヒロインの名前【】
登録・削除
(相手役は俺様……って設定だったか?)
ならばヒロインは決まっている。
ヒロインの苗字【】
ヒロインの名前【】
登録・削除
『お〜お〜、迷い無く姫さんの名前かいな』
小型カメラはPCの画面を映し出しており、忍足に惜しげもなく現状を伝えていた。
そして遂に跡部は小説ページへと足を……いや、マウスを進めたのである。
※以下は小説の一部です
―――――――
―――――
――……
景吾の幸せを願って、は笑顔で見送った。
結局、自分たちは互いに別々の道を選んだけれど、無駄なことなど何もない。
偶然の出会いも、共に過ごした優しい日々も、ぶつかり合い傷付けあった日々も、どれも今では愛おしいばかり。
もし偶然にまた会うことがあれば、その時は笑顔でこう言うつもりだ。
「久しぶり。元気だった?」
……と。
そう、彼の友人の一人として。
END
「アーン?」
どうやら跡部は、タイトルの横に付いていた悲恋マークを理解しないままに読み進めてしまったらしい。
『ぶっ! 跡部のやつ、めっちゃ凹んどるやん!!』
自分の膝を叩きながら、忍足は大爆笑していた。
するとしばらく茫然とパソコン画面を見ていた跡部が、急に動き出した。
『……何や?』
忍足は急いで、跡部の表情を映す1カメから、パソの画面を映す2カメにカメラを切り替えた。
跡部はサイトのHOMEに戻ると、メールフォームを開いたようだ。
カタカタカタ……
【俺様に悲恋なんざ似合うわけねぇだろうが。今すぐ書き直せ!!】
送信。
『あかん! それはやったらあかんで!!』
跡部はFirst(初めての方は此処)に書いてあった【苦情は一切受け付けません】という言葉を、すっかり忘れてしまったらしい。
送信ボタンをクリックすると満足気に頷き、パソコンの電源を落として部室を出て行ってしまった。
『あ〜あ。管理人さん堪忍な……』
誰も居なくなった部室をモニターを通して見ていた忍足は、ポツリとそう呟いてモニターの電源を落とした。
――数日後、跡部邸自室パソコン前。
「何も変わってねーじゃねぇか。アーン?」
跡部のメールは荒らしと判断されたらしく、一切反映されなかったという。
おしまい☆
++++
はい。終了です。
え〜この話では跡部が結末を変えろという無茶なメールを送っていますが、現実に当サイト、及び他のサイト様で、こういうメールを送ったりBBSに書き込んだりするのは迷惑行為です。
絶対にしないでください!
ここに来てくださるお嬢様に、そんなマナー違反をされる方はいらっしゃらないとは思うのですが、書いてしまった内容が内容だけに、一応こうして注意を書かせて頂きました。悪しからずお願いします。
あと、作中の小説(悲恋っぽいもの)が適当でごめんなさい。サラッと流してやってください;
(2010/10/24)