――――どういうこと?
現在地……どっかの建物の中。
辺りをキョロキョロと見渡すと、展示物らしきものがチラホラ。
もしかすると美術館か博物館かもしれない。
所持品……薄っぺらい本一冊。
表紙には『猛獣の飼い方10の基本』という一見物騒なタイトル。
私こんな本買った覚えないんだけど。
つかペラ過ぎでしょ。
え――、皆さんもでしょうが私もさっぱり状況が理解できません。
状況を整理すると、
変な声がした → 変な歪みに引きずり込まれた → ここ。
だ、駄目だ。
さっぱりわからない。
最後に勘がいいとか言ってたしこんな非常識っぽい状況を生み出してるってことはやっぱりアレって神とか仏とかなのだろうか。
何か如何に信心深くない私でもあんなのが神とかだったら嫌過ぎる。
信仰心強い人とか勢いで気絶しちゃうんじゃない?
まぁ今こんなこと考えても埒が明かない。
それにそんな答えのでない問題などより余程深刻な問題がここに生じている。
そう深刻な問題。
それは今が夜であるということ。
それの何処が深刻などと言う無かれ!
建物内は真っ暗だし、人なんて勿論居ない。
もしかしたら見回りの人とかは居るかもしれないけど、今のところ全く見かけてないから居ないも同然。
つまり何が言いたいかと言うと……怖いのだ。
それも物凄く。
だいたい夜に美術館やら博物館やらに1人で居たら誰だって怖いと思う。
て言うか私は怖い。
だってあの絵もいつ動くかも知れないし、あの宝石には呪いがあるかもしれない。
視界に入る展示物が夜闇の中不気味に見えて仕方が無いのだ。
「って、これは……」
目に留まったのは展示物を説明する文章。
展示物を日光から守る為に四方をほぼ壁面で覆われていたが、一面だけガラス張りになっていた。
そこから差し込む月明かりが照らし出したそれを見て私は見入るようにそこだけを見つめた。
展示物に説明が付いているのは美術館や博物館の常であって、全くおかしいところなどない。
ないのだけれど、その文字が頂けない。
「ハ……ハンター文字?」
そこには愛してやまない愛読書『HUNTER×HUNTER』で使用されている文字がツラツラと綴られていたのだ。
もしかすると違うかもしれない。
似たような文字を使う国が存在するのかも?
――ってどっちにしても不法入国じゃん!
これならいっそ『HUNTER×HUNTER』の世界にトリップしたって言われた方がマシな気がする。
というかそれだったら嬉しい……かな?
うん。
大好きなキャラに会えるならこれはきっと幸運だ!!
それに現実問題として、トリップだと言語が障害になる可能性低い気がする(あくまで気がするだけ)。
威張れることじゃないけど私は英語なんて本当に片言しか話せないからね!
あ、とりあえず手元にある本でも見てみるか。
たぶん声が言ってた餞別ってこれだろうし。
というか他に何も持ってないしね〜。
私の『HUNTER×HUNTER』……無事だといいけど。
持っていた筈のコミックスの代わりに持っていた薄っぺらい本を開いてみた。
喜べ、お前今異世界にいるぞ☆
どんな世界かはすぐわかるんじゃねぇか?
ま、死なないようにこの本参考に頑張れよ!