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猛獣の飼い方10の基本

02-じぶんをしゅじんだとにんしきさせましょう

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こんにちは。
……この世界風に言えば、です。
趣味は安全圏からの萌え堪能。


そう、 安・全・圏 からの!!


良いですか〜、ここ試験に出ますからアンダーライン(←この下の線。下線とも言う……ってそのまんまか)引いといてくださいね! ってくらい私にとっては重要なポイントなんであるが、当然の如く現状はそんな甘ったるいものとは無縁。
現実とはいつだって厳しいものなのである。

そういや、現実世界で良く足を運んでいた(実際に赴くわけでは当然無いけど)サイトの夢主さんが、出会って直ぐに団員に抱きつくというとっても羨ましい行動を取っていましたが、私にはムリです。

そりゃ少しもしてみたい気持ちが無いわけではないのだけれど、した後が怖すぎてとてもじゃないけど挑戦する気にはなれない。
さっきも言ったけど【 安全圏 】ってのは本当に大切なのだ。
命はひとつしかないから大切にしなければならない






――って旅団目の前にして言うことではない気もするが。


それにしても原作読んでるときにも思ったけど、何故に廃墟をアジトにしてるのだろう?
別に廃墟でなくとも良いだろうに。

言っては何だがあまりにも『らしい』場所な為、余計に目立つような……いや、この人たち強いから別に目立っても良いのか?


それ以前にホテルとかにした方が余程過ごしやすいんではなかろうか?
ん? というか電気やガスや水道どうしてるんだ?
廃墟なら当然どれも止まってそうな気がする。
もし命が助かったら一度訊いてみても良いかもしれない。


そしてもう一つ気になるのは、妙に体が軽いこと。
簡単に例えて言うなら、普段付けていた錘を外した後的な。
もっと分かりやすく(?)言うと羽が生えたかのような体の軽さ……なのである。




……と、現実逃避はこの辺で止めておこう。
現在私は念の為に棒状に丸めた本を胸の前で抱きしめるように持って、幻影旅団団長クロロ=ルシルフルを見上げている。


フェイタンに連れてこられたのは、私が寝かされていた部屋のある階と同じ階にある広い空間だった。
やけに高い天井だと思ったが、上部に妙な痕跡があったことから、元はもう少し低い天井があったことが推測できる。
あんまりキョロキョロしてもみっともないからと一瞬しか見ていないが、その想像は大きく外れてはいないはずだ。

部屋の中には、奥の瓦礫に気だるげに腰掛けているマチ。マチの右隣に床に胡坐をかいて座るノブナガ。マチの左隣には、元々この場にあったものだろうか? 座りにくそうな椅子に座って、好奇心を隠さずにこちらを伺うシャルナーク。そして部屋に入ってすぐ、目の前の一際大きめな瓦礫に腰掛けてこちらを見下ろしているクロロ。最後に、私の斜め前に、私を此処まで連れてきたフェイタン。以上の5人の姿。
今回は5人での仕事だったのかな?
メンバー勢ぞろいとかじゃなくて良かったにしても、此処から逃げるのは厳しそうだ。

あ、でもパクノダが居ないというのには正直ホッとしている。
さすがに記憶なんて読まれちゃ、一発で死への扉を押し開けるはめになるからね!!!


「やっと来たか。お前には幾つか訊きたいことがある。まずはそうだな……お前の名前は?」

。貴方は?」

「訊かれた事だけこたえるね」


う〜ん、分かりやすいくらいに警戒されてるよ。
次の項目って確か、

じぶんをしゅじんだとにんしきさせましょう

……だっけ? 全くクリアできる気がしないんだけど……。

本のタイトルからして、項目総数10ってところだろうか?
二つ目で既に挫折ってどんだけ早い段階だよ。
先の長さにほとほと嫌気が差す。

って、そんなことお構いナシにこちらを睨むフェイタン。
なんか人馴れしてない猫が威嚇しているように見えるのは、私の目が腐ってしまっているせい?


「そう殺気立つ必要はないだろう。 か、俺はクロロだ。 は何故あそこに居た?」


私が上の空だと知ってか知らずか、話は少しずつ進んでいるようだ。
名前も教えてもらったし、これでうっかり名前呼んじゃっても怪しまれることもないだろう。
そんでもって、そういやこの世界に来て初めてキャラに名前呼んでもらっちゃった! なんか感動〜。
しかし何て答えるべきなんだろ?
馬鹿正直に気づいたらあの場に居た……なんて言っても信じやしないよね。

本当の理由など『神っぽい奴に勝手にこの世界に放られたから』以外の何物でもない。
しかも神っぽいんであって、神だと断言することすら出来やしない。
寧ろこちらが聞きたいくらいだ。
正直に話すべきか、なんとか誤魔化すべきか。


「あそこって、あの……建物の中ってことですか?」

「そうだ」


団長って頭も良いんだよね?
誤魔化すとか実質不可能な気もする。
何ていうかバレたら、怪我だけじゃ済みそうにないし。

でもあんまり直接的なお知り合いにはなりたくないんだよ!
関わると命が幾つあっても足りないでしょ?
あぁ……可能ならば、今すぐ傍観者になりたい……。
うん。土台無理な話だってわかっちゃいるんだけどね。

神(仮)も話すなとは言ってなかったし、ここは正直に話そう。
上手く興味を惹ければ、殺される確立も幾分か目減りするだろう。


ま、下手すりゃ即死な気もするけど。


「クロロさん、信じろ……とは言わないけど、取りあえず最後まで聞いてくれます?」


怖かったけど、真剣なのだと伝えたくて真っ直ぐにクロロの目を見て訴えた。

クロロも暫く何も言わずに私の目をジッと見て、何か考えているようだったが、いつまでも逸らされることのない目に気づくと、一度目を閉じて改めて私を見た。
その目は先程までとは比べ物にならないくらいキツくて怜悧だったけど、きっとこれが本当の彼なのかもしれない。

震えそうになる体を両足を踏ん張って支える。
決して視線は逸らさない。
本当は逃げたくて仕方なかったけど、ここで退いたら女が廃るってもんよね!


「……いいだろう。話せ」


急に視線が柔らかくなったのはなんでだろ?
反対にフェイタンの警戒度は大幅にアップしてしまったような……。
いや、クロロ以外全員の……と言った方が正しいかもしれない。
だって横目でノブナガの方見たら刀に手かけてるし。


「私も……私も良く分からないんです」

「なっ!」

「ノブナガ、静かにしていろ」

「……すまねぇ」

「クロロさん、貴方は神の存在を信じますか?」

「いや」

「そうですか。私も信じてなかった。……この世界に連れて来られるまでは。実を言うと私はこの世界の人間じゃないんです」


ガキィーン!!


「……すみませんが、話が終わるまで邪魔はしないで下さい」


抜き放たれたノブナガの太刀を、何かあった時のためにと武器代わりに丸めておいた本で受けとめる。
しかしながら刀を受けとめられる本ってのは、何度考えてみても不気味過ぎる。


「お前何者だ!?」


あ〜も〜!! いちいち口を挟むからちっとも話進まないじゃない!!!!



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